鈴虫が少し遠くで鳴いている
犬はそれを追いかけるように吠えている
車の走行音も混じって
時々人の話し声が全ての音を遮る
誰かを頼りにしたいとき
特定の人を思い浮かべるけれど
頼れないなら
胸に右手を当てて
頭の中で大丈夫とささやく
それは何度も何度でも
私が落ち着くまで
心の海が涙で揺れて
漣が大波に変わっても
溺れて息ができないときも
浮き輪がなくても
救うのは優しい言葉
むずかしくしないで
大丈夫
そう言って沈みかける自分を
海上に引っ張りながら泳ぐ言葉なんだ
なぜ詩を書くのか
こうして綴るのか
理由は呼吸をするため
海の底も悪くないけれど
空気の澄んだ場所に連れていきたい
深呼吸をして
あなたは悪くないと耳に伝えたい
犬が吠えている
鈴虫は寝たのか静かになった
相変わらず人の声だけが響いている
そんな世界だから
文章を書く
ちっぽけな存在だと分かっているから
あなたを心配して
言えないことが心に溜まって
夜に飲み込まれないように
ChaKi Room
文章や詩を書いたり絵を描いてみたり自由な場所
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