私には6年間、不思議な関係が続いた人がいた。〝友だち〟とも〝親友〟とも呼べないそれは名もなき関係だった。
彼は一見フレンドリーな振る舞いをするけど、私には〝そう見せている〟感じがした。ヘラヘラして見せるけど内側にいるような。
寂しさを何かで隠している感じがして、愛を欲しがっているような背中を向けて、いつも気がついたら横にいた。偏った幼さを持つ彼の横顔を見ている時間が、何故だかとても心地が良かった。どうしてだろう。
私が書く詩を初めて彼に見せたとき「俺には分からない。」と言った。わざわざ言わなくてもいいのにと思ったが、また何度も何度も詩を読み返している姿を見て、分からないなりに感じ取ろうとしてくれているのかな、とそれまでの彼の印象が少しだけ変わった瞬間だった。
いつの間にか、一緒にいることが多くなって幼少期の頃から今までのことをお互いに話し合ったりもした。
彼の家で逃げ恥を撮り溜めたDVDを見つけたときがあった。ガッキーが好きな彼と源さんが好きだった私はお互いに語り合った。「源さんかっこいい!」って言ったら「かっこよくはない。」って言い返されたのを覚えてる。ちょっと考えてから「ガッキーはかわいい。」って私は言ったけど。
日が落ちて街灯に照らされた私たちは、昼よりも穏やかなオレンジだった。
公園のベンチで好みの似た音楽を聴いて、彼の地元の話を聞いて、ブランコが風に揺れる音に耳を使った。
もう今では大金を払っても、買うことの出来ない、触れることさえ許されない時間になってしまった。夢を語り合う子どもの眼をしたふたりは、ここにはもう存在しない。
〝好き〟という言葉以上の彼に出会えたことは、後悔していない。
ただ胸の奥に、僅かに漂うあの日のにおいが今も時々する。記憶が石鹸の泡のように白濁していくのを見届けながら、もう終わりにしようとこうして綴る。
ChaKi Room
文章や詩を書いたり絵を描いてみたり自由な場所
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